「子どもは鼻からのワクチンを選べるのに、私も注射が嫌です。なぜフルミストは19歳未満だけなのですか?」。お母さんから実際にいただいた質問です。
日本で承認されているフルミストの対象は、2歳以上19歳未満、つまり2~18歳です。ただし、19歳になった途端に危険になるという意味ではありません。米国では2~49歳が承認対象です。国ごとに審査された資料と承認範囲が異なります。日本の添付文書(PMDA)/米国の添付文書(FDA)
「子ども向け」になった理由
日本で承認の根拠となった試験は、2016~17年シーズンに2~18歳の健康な子ども910人を対象に行われました。フルミストを受けた群では25.5%、プラセボ群では35.9%がインフルエンザを発症し、相対的な発症リスクの減少は28.8%でした。これはプラセボとの比較であり、注射型より優れていることを示した数字ではありません。Nakayama T, et al. J Infect Chemother. 2025:国内第Ⅲ相試験の原著論文
海外の小児を対象とした試験には、点鼻型が注射型より発症を防いだものもあります。一方、健康な成人を対象にした別の試験では、そのシーズンの注射型の効果が点鼻型を上回りました。子どもの試験結果をそのまま大人に当てはめることはできません。また、これらは過去の流行シーズン・当時のワクチンによる結果で、今季の効果を約束する数字でもありません。Belshe RB, et al. N Engl J Med. 2007:小児での比較試験/Monto AS, et al. N Engl J Med. 2009:成人での比較試験
針を使わない利点と、接種前に確認すること
フルミストは弱くしたウイルスを鼻に噴霧する生ワクチンです。針を刺さず、日本の用法では各鼻腔に1回ずつ噴霧し、そのシーズンの接種は1回です。注射が苦手なお子さんには、この方法自体が利点になります。PMDA・用法及び用量
鼻水・鼻づまりが出ることがあります。国内試験ではフルミスト群59.2%、プラセボ群52.6%に鼻水が報告されました。差だけでなく、比較相手にも症状があったことを踏まえて読む必要があります。Nakayama T, et al.:副反応の結果
免疫機能に明らかな異常がある方や妊娠中の方には接種できません。喘息・喘鳴、服薬内容、重度の免疫不全の方との密接な接触なども確認します。2歳未満は、海外試験で入院や喘鳴のリスク増加が報告されており対象外です。PMDA・接種不適当者と注意事項
お母さん自身はどう選ぶ?
19歳以上の方は、日本で承認されたフルミストの接種対象には入りません。「注射が苦手」と接種前に伝えていただいて構いません。年齢、持病、妊娠の可能性などを確認し、国内で対象となるワクチンについて相談してください(ただし,現状成人には注射以外でのワクチン接種の適応は残念ながらありません,ただし,どうしても注射を避けたい場合はご相談ください)。
Q1.フルミストは、なぜ18歳までなのですか?
日本では、フルミストは2歳以上19歳未満の方に承認されています。
これは「19歳以上では副作用が急に増えるから」という意味ではありません。海外では成人にも使用されている国がありますが、成人ではこれまでの感染やワクチンによってインフルエンザに対する免疫をすでに持っていることが多く、経鼻生ワクチンの効果が小児ほど得られにくいことがあります。
日本では主に2〜18歳を対象とした臨床試験をもとに承認されているため、当院でも承認された年齢である2歳以上19歳未満の方を対象に接種しています。
なお、年齢だけでなく、喘息の状態や免疫機能、使用中のお薬などによって接種できない場合があります。接種前に医師が確認します。
Q2.フルミストを受けられない患者さんはどんな人?
フルミストは鼻から投与する「弱毒生インフルエンザワクチン」です。そのため、すべてのお子さんに使用できるわけではありません。
発熱している場合や、重い急性疾患にかかっている場合、免疫機能が大きく低下している場合、免疫を抑える治療を受けている場合などは接種できません。
Q3. 喘息のお子さんはフルミストを受けられますか?
喘息があるからといって、インフルエンザワクチンそのものを接種できないわけではありません。
通常の注射によるインフルエンザワクチンは不活化ワクチンで、喘息のお子さんにも一般的に接種できます。むしろインフルエンザ感染をきっかけに喘息が悪化することがあるため、予防接種は大切です。
一方、フルミストは鼻から投与する弱毒生ワクチンです。そのため、現在ゼーゼー・ヒューヒューしている場合や、喘息の症状が強い場合には適さないことがあります。
喘息があるという理由だけで一律にフルミストが接種できないわけではありません。現在の症状、これまでの喘鳴の状況、治療内容などを確認したうえで医師が判断します。
フルミストが適さない場合でも、注射によるインフルエンザワクチンを選択できる場合があります。
また、重い喘息がある、現在ゼーゼー・ヒューヒューしている、けいれんの既往がある、卵やゼラチンなどに強いアレルギーがある場合には、接種できるか医師が慎重に判断します。
喘息があるだけで必ず接種できないわけではありません。現在の症状や治療内容を確認して判断しますので、ご心配な場合は予約時または診察時にお知らせください。
茅ヶ崎信愛クリニックでは、2026年度のインフルエンザ予防接種について、自費接種を9月11日から、公費接種を10月2日からご案内しています。
監修 医学博士 小島正之