コロナ感染症がまた増えてきました

コロナ感染症がまた増えてきました

ワクチンは今後も必要?治療薬は飲むべき?効果・リスク・費用を整理します

最近、当院でも新型コロナウイルス感染症の患者さんを診察する機会が、再び少しずつ増えてきました。

「もうコロナは終わったのでは?」

と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、新型コロナウイルスはなくなったわけではありません。神奈川県でも2026年8月には、定点医療機関からの患者報告数や下水中の新型コロナウイルスRNA量に再び増加がみられています。神奈川県の下水サーベイランスでは、定点当たり報告数が8月16日の0.58から8月23日には1.10へ上昇しました。

一方で、2020~2022年頃と現在では状況がかなり違います。

多くの方がワクチン接種や過去の感染による免疫を持っており、治療薬も使えるようになりました。

だからこそ今は、

「コロナに感染したら全員同じように治療する」
「全員が毎年ワクチンを打つ」

という考え方ではなく、

自分が重症化しやすい人なのかを考えて、ワクチンや治療薬を選ぶ

時代になったと考えています。


まず、今のコロナで一番重要なのは「重症化リスク」です

若く、持病もなく、これまでワクチン接種や感染歴がある方では、発熱・のどの痛み・咳・倦怠感などで終わることも多くなりました。

一方で、同じ新型コロナでも、

高齢の方、慢性心疾患、慢性肺疾患、腎臓病、糖尿病、高度の肥満、がん治療中、免疫を抑える薬を使用している方などでは、肺炎・入院・死亡へ進むリスクが高くなります。

ですから診察では、

「コロナ陽性です」

だけで終わるのではなく、

この患者さんが5日後、10日後に悪くなる可能性がどのくらいあるのか

を見ることが重要です。

コロナワクチンは、これからも接種したほうがいい?

これは現在、非常によく聞かれる質問です。

私なら患者さんには、

「全員に同じ強さでおすすめするワクチンではなくなった。しかし、重症化リスクが高い人には今でも意味がある」

と説明します。

厚生労働省も現在の定期接種の目的を、感染そのものを完全に防ぐことではなく、主として重症化を予防することとしています。2024/25シーズンに使用されたJN.1系統対応ワクチンでは、国内研究で60歳以上の入院を約63%予防したとの報告があり、国内外の研究をまとめると入院予防効果は概ね45~70%程度と報告されています。

ここが大切です。

ワクチンを打ってもコロナには感染します。

したがって、

「接種したのに感染した。ワクチンは意味がなかった」

とは必ずしも言えません。

現在のワクチンの大きな目的は、

感染をゼロにすることより、肺炎・入院・死亡の可能性を下げること

です。


では、どんな人なら接種を積極的に考えたい?

特に接種のメリットが大きいと考えられるのは、65歳以上の方、免疫が低下している方、心臓・肺・腎臓などに持病がある方、糖尿病など重症化につながる基礎疾患がある方です。

反対に、若く健康で、過去のワクチン接種や感染による免疫もある方では、重症化する絶対リスクそのものが低いため、追加接種によって得られるメリットは高齢者ほど大きくありません。

その場合は、職業上多くの人と接する、ご家族に高齢者や免疫の弱い方がいる、過去のコロナでかなり症状が強かった、といった事情も含めて考えてよいと思います。

つまり、

「コロナワクチンは打つべきか?」ではなく、
「私の場合、接種によってどのくらい得をするのか?」

という考え方が大切です。


「遺伝子組み換えワクチンが心配です」という質問について

ここは言葉を少し整理する必要があります。

日本で使われてきた新型コロナワクチンには、大きく分けると、

種類代表例仕組み
mRNAワクチンコミナティ、スパイクバックス、ダイチロナmRNAを利用
自己増幅型mRNAワクチンコスタイベレプリコンmRNA
組換えタンパクワクチンヌバキソビッド作製したスパイクタンパク質を接種

があります。2026年度に定期接種でどの製剤を使用するかについては、9月6日現在、厚生労働省から最終的な詳細はまだ発表されていません。

mRNAワクチンは「人間の遺伝子を書き換えるワクチン」ではありません

「mRNAだから、自分のDNAに入り込むのでは?」

という心配を聞くことがあります。

しかし、mRNAワクチンによって人のDNAが書き換えられることを示す科学的根拠はありません。mRNAは細胞に一時的にタンパク質を作る情報を伝えた後に分解され、ヒトDNAに組み込まれる仕組みではありません。WHOも、mRNAワクチンが接種者の遺伝子に組み込まれることは示されていないと説明しています。

一方、**「組換えタンパクワクチン」**という名称は実際にあります。

ヌバキソビッドなどでは、遺伝子組換え技術を利用して工場でスパイクタンパク質を作り、それをワクチンとして接種します。

これはB型肝炎ワクチンなどでも以前から使われてきた技術です。患者さん自身の遺伝子を組み換えるという意味ではありません。


「レプリコンワクチンは体の中で増え続ける?」という心配

レプリコンワクチンは自己増幅型mRNAワクチンです。

「自己増幅」という言葉だけを見ると、

「一度打つと体内で永久に増えるのでは?」

と不安になるかもしれません。

しかし、体内でのmRNAの増幅は一時的です。

厚生労働省は、無限にタンパク質が作られるものではなく、接種した人から周囲の人へワクチン成分が伝播するという科学的知見も現在確認されていないとしています。

ただし、新しい技術ですから、

「何も考えず安全と言い切る」のも、「遺伝子が変わるから危険と言い切る」のも、どちらも適切ではない

と思います。

臨床試験と接種後の安全性データを継続して確認していく姿勢が大切です。


コロナワクチンにはどんな副反応がありますか?

よくみられるのは、

接種部位の痛み、倦怠感、発熱、頭痛、筋肉痛・関節痛などです。

多くは数日以内に改善します。

一方、まれですが、アナフィラキシーや心筋炎・心膜炎が報告されています。特にmRNAワクチン後の心筋炎・心膜炎は若い男性で注意されてきました。厚生労働省は現在も各ワクチンについて副反応疑い報告を継続して集計・評価しています。

だからこそ、

20歳の健康な男性と、80歳で糖尿病・心疾患がある方では、同じワクチンでも利益とリスクのバランスが違います。

私はそこを個別に考えることが重要だと思います。


茅ヶ崎市ではコロナワクチンはいくら?

2026年9月6日現在、令和8年度の茅ヶ崎市の具体的な接種期間・自己負担額はまだ正式に公表されていません。 国も令和8年度について「詳細が決まり次第案内」としています。

参考までに昨年度、茅ヶ崎市では、

2025年10月1日~2026年1月31日

に、65歳以上、または60~64歳で一定の心臓・腎臓・呼吸器・免疫機能障害のある方を対象に定期接種を実施し、

自己負担5,000円

でした。生活保護世帯の対象者は免除となっていました。

今年度については市から正式に発表され次第、当院ホームページでもお知らせします。

対象年齢以外の方は原則として任意接種=全額自己負担となり、料金は医療機関ごとに異なります。

ここもワクチンと同じです。

コロナ陽性だから全員が抗ウイルス薬を飲む必要はありません。

現在、外来で使用する主な飲み薬には、

パキロビッド、ラゲブリオ、ゾコーバ

があります。

しかし、この3つは目的が少し違います。


① パキロビッド――「重症化を防ぐ」ために使う薬

パキロビッドは、特に重症化リスクの高い患者さんで検討したい薬です。

発症後できるだけ早く使用し、臨床試験では発症6日目以降に開始した場合の有効性を裏付けるデータはありません。現在の添付文書では、重症化リスクを持つなど治療が必要と考えられる患者に使用するよう求められています。

初期の臨床試験では、ワクチン未接種の高リスク患者において入院・死亡を約88~89%減少させました。

ただし重要な変化があります。

現在は多くの人がワクチンや感染による免疫を持っています。2026年に報告された、ワクチン接種済みの比較的高リスク患者を対象とした大規模ランダム化試験では、入院・死亡そのものが非常に少なく、パキロビッドによる明確な追加効果は確認できませんでした。

ですから今は、

「コロナだからパキロビッド」ではなく、
80歳、免疫抑制、複数の持病など、本当に重症化リスクの高い人ほど価値が大きい

と考えるのが実際的です。

またパキロビッドは薬物相互作用が非常に多いため、降圧薬、抗不整脈薬、睡眠薬、抗凝固薬など、普段の薬を必ず確認する必要があります。腎機能によっても用量が変わります。


② ラゲブリオ――高リスク患者で、他の薬が使いにくい場合など

ラゲブリオも、主として重症化リスクのある成人に使用します。

通常800mgを1日2回、5日間服用し、発症後できるだけ早く開始します。18歳未満には使用せず、妊婦・妊娠している可能性のある女性には投与できません。

初期の臨床試験では入院・死亡リスクを約30%低下させました。

したがって、重症化予防効果という意味では一般にパキロビッドほど強いデータではありませんが、薬物相互作用などの理由でパキロビッドが使用しにくい患者さんの選択肢になります。


③ ゾコーバ――主に「症状を早く改善する」薬

ゾコーバは少し性格が違います。

重症化リスクが低い方にも使用できますが、

「入院や死亡を大幅に減らす薬」というより、症状を早く改善させることを目的とする薬

と考えると分かりやすいでしょう。

臨床試験では、症状が消失・改善するまでの期間が約1日短縮しました。厚生労働省も、パキロビッド・ラゲブリオでは重症化抑制が示されている一方、ゾコーバは症状改善までの期間を約1日短縮する薬と説明しています。

現在の添付文書では、症状発現から72時間以内に開始します。妊娠中または妊娠している可能性がある女性には使用できず、併用できない薬も多くあります。

健康な若い方が、

「一日でも早く仕事に戻りたい」

という理由だけで高額な薬を使うかどうかについては、費用も含めて考える必要があります。


コロナ治療薬はいくらするの?

ここは以前と大きく変わりました。

以前は国による公費負担がありましたが、2024年4月からコロナ治療薬への特別な公費負担は終了し、現在は通常の健康保険の1~3割負担です。

現在の薬価から成人の標準的な1治療分を計算すると、おおよその薬剤費だけは次のようになります。

治療薬1治療分の薬価1割負担2割負担3割負担
ゾコーバ約49,600円約5,000円約9,900円約14,900円
ラゲブリオ約86,600円約8,700円約17,300円約26,000円
パキロビッド約99,000円約9,900円約19,800円約29,700円

ゾコーバ125mgの現行薬価は1錠7,090円、ラゲブリオ200mgは1カプセル2,164.90円、パキロビッド600は1日分1シート19,805.50円です。

これに、

診察料、コロナ検査料、処方箋料、薬局の調剤・服薬指導料、解熱鎮痛薬など

が別途加わります。

「以前コロナになったときは薬代がほとんどかからなかったのに、今回は高い」

と感じる方がいるのは、この公費負担が終了したためです。


では、3万円近く払ってでも治療薬を使ったほうがいい?

これこそ患者さんによって答えが変わります。

80歳で心不全や糖尿病がある患者さんと、

30歳で持病がなく、ワクチン接種歴もあり、食事も水分も取れている患者さん

では、同じ「コロナ陽性」でも治療薬を使用する意味が違います。

前者なら、

約3万円の自己負担があっても、入院や重症化を防ぐ可能性を優先して抗ウイルス薬を検討する価値があります。

一方、後者の場合には、重症化する絶対的な可能性がもともと低いため、

1日程度症状を短くすることに1万数千円を支払うか

まで含めて一緒に考えることになります。

薬は、

「高いから使わない」でも、
「コロナだから必ず使う」でもありません。

その人の重症化リスクと、薬によって得られる利益、薬物相互作用、副作用、費用を合わせて判断するものです。

私たちが診察で大切にしたいこと

コロナ診療で大切なのは、

「陽性でした。薬を出します。」

だけではないと思っています。

酸素濃度は大丈夫か。
肺炎を起こしていないか。
水分は取れているか。
高齢ではないか。
心臓・肺・腎臓・糖尿病などの持病はないか。
普段飲んでいる薬とコロナ治療薬がぶつからないか。

そこまで考えて、

「この患者さんには治療薬を使った方がよい」
「この患者さんなら対症療法で経過をみてもよい」

を判断します。

同じことはワクチンにも言えます。

今後のコロナとの付き合い方は、

全員一律の予防・治療から、一人ひとりのリスクに合わせた予防・治療へ

変わってきています。

茅ヶ崎信愛クリニックでは、年齢や持病、これまでのワクチン接種歴、感染歴、現在飲んでいる薬などを確認しながら、必要な検査・ワクチン・治療について一緒に考えていきます。

自分にとって、どの選択が一番よいのか。
その判断の「羅針盤」になる医療を提供していきたいと思います。

茅ヶ崎信愛クリニック

この記事は一般的な情報をお伝えするものです。症状の感じ方や必要な検査は一人ひとり異なります。気になることがあれば、遠慮なく診察のときにお尋ねください。

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