肛門のかゆみや湿り気、においは、人に相談しにくい症状の一つです。「汗のせい」「清潔にできていないから」と考え、長く我慢してしまう方もいます。
しかし、肛門のかゆみは、皮膚への刺激だけでなく、痔、皮膚炎、感染症などが原因のこともあります。今回は、肛門のかゆみ・湿り・においが気になるときに考えられる原因と、受診の目安を解説します。
肛門がかゆくなる主な原因
拭きすぎ・洗いすぎによる刺激
排便後に何度も強く拭いたり、石けんやボディソープで念入りに洗ったりすると、肛門周囲の皮膚を守るバリア機能が低下することがあります。その結果、乾燥や炎症が起こり、さらにかゆくなることがあります。
温水洗浄便座も、長時間使ったり水圧を強くしたりすると刺激になる場合があります。洗った後は、こすらず、柔らかい紙やタオルで軽く押さえるように水分を取ります。
汗や便の付着
肛門周囲は蒸れやすく、汗や少量の便が皮膚に残ると、かゆみやにおいにつながります。下痢や軟便、便漏れがある方では、症状が続きやすくなります。
痔や肛門周囲の病気
痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)があると、出血や痛みだけでなく、粘液や便の付着によるかゆみが起こることがあります。肛門の周囲から膿が出ている場合は、肛門周囲膿瘍や痔瘻など、別の病気が隠れている可能性もあります。
特に、下着に膿や血液が繰り返し付く、同じ場所が腫れる、しこりや穴があるといった場合は、単なる皮膚のかゆみと決めつけないことが大切です。
皮膚炎や感染症
かぶれ、真菌などの感染症でも、肛門周囲に赤みや強いかゆみが出ることがあります。見た目だけでは判断しにくいため、市販薬を使っても改善しない場合は診察を受けましょう。
自宅でできる対処
- 排便後はこすらず、ぬるま湯でやさしく洗う
- 温水洗浄便座は短時間・弱めに使用する
- 洗った後は水分を押さえるように拭き、蒸れを避ける
- 通気性のよい下着を選び、汗をかいたら交換する
- かゆくても爪でかかない
市販の痔の薬やかゆみ止めで一時的に症状が軽くなることはあります。ただし、原因によっては適さない薬もあります。使い続けても改善しない場合は、自己判断で薬を長期使用せず、医療機関に相談してください。
受診したほうがよい症状
次のような場合は、肛門科、外科、消化器外科などを早めに受診しましょう。
- かゆみが1〜2週間以上続く
- 赤み、ただれ、出血、痛みがある
- 肛門の周囲から液体や膿が出る
- 下着の汚れやにおいが繰り返す
- しこり、腫れ、皮膚の穴がある
- 発熱や強いだるさを伴う
- 市販薬を使っても改善しない、または悪化する
強い痛みや腫れ、または発熱がある場合は、予約日を待たずにご相談ください。肛門周囲膿瘍では、痛みが排便時だけでなく、じわじわ続くことがあります。膿が出て痛みが軽くなっても、痔瘻として通り道が残っていることがあるため、放置はおすすめできません。
診察では何を確認する?
診察では、皮膚の赤みやただれ、しこり、出血や膿の有無を確認します。必要に応じて肛門周囲の診察や直腸肛門指診を行い、深い病変が疑われる場合は画像検査を検討します。
「かゆみだけで受診してよいのか」と迷う必要はありません。症状の原因を確認することで、洗い方や薬の使い方を見直せる場合があります。茅ヶ崎信愛クリニックでは、肛門のかゆみ、湿り、におい、腫れ、痛みなどのご相談を受けています。恥ずかしさから我慢せず、気になる症状が続くときはご相談ください。
参考情報
- 日本臨床外科学会「痔・肛門疾患とは? 一般の方へ 3.痔の症状」
- 日本臨床外科学会「痔・肛門疾患とは? 一般の方へ 5.3大疾患の診断と治療」
- 日本大腸肛門病学会「肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改訂第2版」
監修 医学博士 小島正之