「数年前の大腸カメラでは異常なしだったのに、今回の便潜血検査は陽性。もう一度、あの検査を受ける必要があるのでしょうか」
前回の検査で異常がなかったことは、今回の判断にも役立つ情報です。ただ、それだけで便潜血陽性を無視してよいとは言えません。再検査の必要性を考えるには、いつ受けたかに加えて、大腸全体を十分に観察できていたかを確認する必要があります。
最近、十分な観察ができた大腸カメラで異常がなかった場合の対応については、国立がん研究センターも、国としての方針はまだ決まっておらず、前回の担当医に相談するよう案内しています。[1]
「異常なし」という結果の中身を確かめる
大腸カメラは、大腸の粘膜を直接観察する検査です。ただし、便が残っていたり、途中までしか内視鏡が入らなかったりすると、見えていない部分が残ることがあります。
そのため、前回の結果を確認するときには、検査日だけでなく、奥の盲腸まで到達したか、腸内の洗浄状態は良好だったか、観察に制限がなかったかを見ます。病変が見つからなかったことと、大腸全体を十分に確認できたことは、同じとは限りません。
ポリープを取ったことがある方では、切除したものの種類や大きさ、個数、その後に勧められた検査時期も判断材料になります。「取ったので異常なし」と説明された場合でも、切除歴と病理結果を伝えてください。
一方、十分な観察ができた検査の後でも、将来にわたって病変が生じないことを保証するものではありません。前回の記録と今回の結果をつなげて考える必要があります。[2・3]
研究でも「何年以内なら不要」とは言い切れません
韓国の大規模な観察研究では、便潜血陽性となった人のうち、過去6か月〜5年以内に大腸カメラを受けていた群で、便潜血検査後1年以内に大腸がんと診断された割合は0.72%でした。前回の検査から長い期間が経っている群より低い結果でした。[2]
ただし、この研究は前回の検査が正常だった人だけを対象にしたものではありません。前処置の良し悪し、大腸全体を観察できたか、前回の詳しい所見なども確認できていません。
別の研究では、3年以内に大腸カメラを受けていた便潜血陽性者でも、再検査で2.1%に大腸がんが見つかっています。[3]
対象者や研究方法が異なるため、この二つの数字をそのまま比べたり、ご自身のがんの確率として当てはめたりすることはできません。「5年以内なら受けなくてよい」という一律の線引きにはできないことが、これらの研究から読み取れます。kjim.org
便潜血のやり直しで、陽性を取り消すことはできません
便潜血陽性は、便の中に血液が検出されたという結果です。がんと確定したわけではなく、痔や炎症などが関係していることもあります。
しかし、出血の原因までは便潜血検査では分かりません。痔がある場合も、それだけが原因だと決めつけることはできません。
また、大腸の病変から毎日出血するとは限らないため、便潜血検査をやり直して陰性になっても、最初の陽性が誤りだったとは判断できません。便潜血検査の繰り返しは、精密検査の代わりにはなりません。[1・4]
一般に、便潜血陽性後の精密検査では全大腸内視鏡検査が最初に検討されます。最近の検査内容や持病、検査に伴う負担も踏まえて、担当医と再検査の必要性や時期を相談してください。[1]
症状があるときは、前回の検査時期だけで判断しない
血便、腹痛、これまでと違う便通が続いている場合には、検診の結果を確認するだけでなく、症状の原因を調べる診療が必要です。体重減少や貧血を指摘されたことも、受診時に伝えてください。
前回の大腸カメラが最近だったとしても、こうした変化があれば、次回の健診まで待たずに相談しましょう。[1]
出血が多い、出血にめまいや失神を伴う場合は、通常の検査予約を待たず、救急受診が必要です。[5]
受診には、今回の結果と前回の記録を
今回の便潜血検査の結果票に加えて、前回の大腸カメラの報告書があればお持ちください。ポリープを切除した方は、病理結果や、その後の検査間隔が書かれた書類も役立ちます。服用中の薬は、お薬手帳で確認できるようにしてください。
記録が見つからなくても、受診を遅らせる必要はありません。検査を受けた施設と、おおよその時期が分かれば、その情報を伝えてください。
茅ヶ崎信愛クリニックでは、健診・検査異常のご相談を受け付け、大腸内視鏡検査も行っています。今回の陽性結果と前回の検査情報を持って、ご相談ください。
私は、健診の異常値を病名の確定として捉えるのではなく、何を確認する必要があるかを考える手がかりにしたいと考えています。前回が正常だったという安心材料も、今回陽性だったという新しい情報も、どちらも判断に生かします。
便潜血が1回だけ陽性だった場合については、便潜血検査が1回だけ陽性でも大腸カメラは必要?でも説明しています。
根拠となる論文・公的資料
[1]国立がん研究センター「大腸がん検診について」
「検診の判定」「最近受けた大腸内視鏡検査で異常なしだった場合」「精密検査の方法」を参照。最近の正常内視鏡後の個別相談、便潜血の再検査では代用できないこと、症状がある場合の受診を支える資料です。ganjoho.jp
[2]Jung YS, et al. Risk of colorectal cancer in patients with positive results of fecal immunochemical test performed within 5 years since the last colonoscopy.
Korean Journal of Internal Medicine. 2021;36:1083–1091.
DOI:10.3904/kjim.2020.525
前回の検査からの期間と大腸がん診断の割合を検討した観察研究。前回の検査の質や所見を評価できていないという限界も参照しました。
[3]Kim NH, et al. Yield of repeat colonoscopy in asymptomatic individuals with a positive fecal immunochemical test and recent colonoscopy.
Gastrointestinal Endoscopy. 2019;89:1037–1043.
DOI:10.1016/j.gie.2019.01.012
最近の大腸カメラ後でも、便潜血陽性者の再検査で病変が見つかり得ることを示した研究です。
[4]日本消化器内視鏡学会「便潜血検査で『1回だけ陽性』と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?」
1回だけの陽性でも精密検査が勧められるという一般的な考え方を参照しました。日本消化器内視鏡学会
[5]米国国立糖尿病・消化器病・腎疾病研究所(NIDDK)「消化管出血の症状と原因」
出血にめまい・失神などを伴う場合の緊急性を参照しました。NIDDK
資料確認日:2026年10月6日。
監修 医学博士 小島正之