「LDLコレステロールが165でした。薬を飲んだほうがいいですか?」
健診結果を持って来院された患者さんから、外来でよく聞かれる質問です。
実は、この質問には「165だから薬を飲む」「165ならまだ大丈夫」という一つの答えはありません。
LDLコレステロールは、いわゆる「悪玉コレステロール」です。高い状態が長く続くと動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクにつながります。一方で、治療の必要性はLDLの数字だけでは決まりません。
今回は、健診でLDLコレステロールが高いと言われたときに、診察室で私たちが何を見ているのかを、140・160・180mg/dLという数字も使いながら説明します。
まず知っておきたい「LDL 140」の意味
日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール140mg/dL以上を「高LDLコレステロール血症」の診断基準としています。
ただし、ここで大切なのは、140mg/dLを超えたら全員が直ちに薬を飲む、という意味ではないことです。
診断基準と治療目標は別です。
例えば、同じLDL 160mg/dLでも、40代で喫煙せず、血圧や血糖にも問題がない方と、糖尿病や慢性腎臓病がある方、すでに心筋梗塞を経験した方では意味が大きく違います。
なぜ症状がないのに治療するのでしょうか?
LDLコレステロールが高くても、多くの場合は痛みも息苦しさもありません。
そのため、「体調はいいのに、なぜ治療する必要があるの?」と感じる方もいます。
問題は、動脈硬化が長い時間をかけて進むことです。LDLコレステロールは動脈硬化性疾患の重要な危険因子であり、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために評価します。
つまり、LDL治療は「今日の症状を治す」というより、将来起こり得る血管の病気を予防する治療という側面が大きいのです。
LDL 140・160・180はどう考える?
140mg/dL以上は、高LDLコレステロール血症に該当します。まず生活習慣や他のリスク因子を確認します。
160mg/dL前後になると、「少し高いだけ」と放置せず、血圧、糖尿病、喫煙、腎機能、家族歴などを含めた総合評価がより重要になります。
180mg/dL以上では、より注意が必要です。日本動脈硬化学会の一般向け資料でも、LDL-C 180mg/dL以上ではリスク区分にかかわらず薬物療法を考慮するとされています。
また、著しく高いLDLが続く場合には、家族性高コレステロール血症(FH)が隠れていないかも考えます。
同じLDL 160でも治療が違う理由
診察室ではLDLの値だけを見ているわけではありません。
例えば、年齢、血圧、糖尿病、喫煙の有無、慢性腎臓病、心筋梗塞や狭心症の既往、脳梗塞の既往、家族歴などを確認します。
そのため、患者さんから「友人はLDL 160で薬を飲んでいないのに、なぜ私は必要なのですか?」と聞かれることがあります。
答えは、同じ数字でも、その人が持つ将来の心血管リスクが違うからです。
治療目標も一律ではありません。一次予防ではリスクに応じて目標値が設定され、すでに冠動脈疾患などを経験している方では、より厳格な管理が必要になる場合があります。
「卵を食べなければいい」は本当?
LDLが高いと言われると、「卵をやめます」と話される方が少なくありません。
しかし、食事を考えるときは一つの食品だけに注目しないことが大切です。
特に意識したいのは、肉の脂身、バター、生クリームなどに多い飽和脂肪酸です。一方で、魚、大豆製品、野菜、海藻、きのこ、未精製穀類などをバランスよく取り入れます。
また、食物繊維を十分に摂ることも重要です。
「何を禁止するか」だけでは長続きしません。外来では、普段の朝食、昼食、夕食、間食を聞きながら、実際に変えられるところを一緒に探すほうが現実的です。
薬を飲み始めたら一生やめられない?
これも非常によく聞かれる質問です。
スタチンなどの薬は、LDLコレステロールを下げ、心血管イベントを予防するために広く使われています。
一方で、「薬を始めたら絶対に一生やめられない」という考え方は適切ではありません。
治療の必要性は、その方のリスク、LDL値、生活習慣の変化、年齢、合併症などを踏まえて継続的に判断します。ただし、自己判断で中断するとLDLが再び上昇することがありますので、変更するときは医師と相談してください。
LDLが非常に高い場合は家族にも目を向けます
「若い頃からLDLが高い」「家族にもコレステロールが高い人が多い」「父親が若くして心筋梗塞になった」。
こうした場合には、家族性高コレステロール血症を考えます。
FHは遺伝性疾患です。そのため、一人を診断することが、ご家族の早期発見につながることもあります。
特に未治療のLDLコレステロールが著しく高い場合や、若年で冠動脈疾患を発症した家族がいる場合には、単なる「食べ過ぎによるコレステロール高値」と決めつけないことが大切です。
健診で高かったら、まず何をすればいい?
健診でLDL高値を指摘された場合、結果の紙をそのまま持って受診していただいて構いません。
診察ではLDLだけでなく、HDLコレステロール、中性脂肪、血糖、HbA1c、血圧、腎機能なども確認します。また、必要に応じて甲状腺機能低下症など、二次的にコレステロールが上がる病気がないかも考えます。
そのうえで、生活習慣を改善して再検査するのか、薬物療法を検討するのかを決めていきます。
「健診で引っかかった=すぐ薬」ではありません。しかし、「症状がない=放置してよい」でもありません。
茅ヶ崎で健診のLDL高値を指摘された方へ
健診結果には数字が並んでいます。しかし、その数字が自分にとってどの程度重要なのかは、結果用紙だけでは分かりにくいものです。
茅ヶ崎信愛クリニックでは、健診でLDLコレステロールや中性脂肪、血糖、血圧などの異常を指摘された方のご相談を受けています。
「薬が必要なのか知りたい」「まず食事で頑張りたい」「家族に心筋梗塞が多くて心配」といった段階でも構いません。
健診結果を一緒に見ながら、数字だけではなく、その方全体のリスクを考えて方針を決めていきます。
参考情報
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」および同学会の一般向け動脈硬化予防情報を参考に作成しています。治療目標や薬物療法の適応は個々の病状によって異なります。
監修 小島正之