「熱が出たらいつ受診?」「検査はいつ?」「薬は必要?」を解説します
「まだ暑いのに、インフルエンザ?」
そう思われる方も多いかもしれません。
しかし2026年は、例年よりかなり早い時期からインフルエンザが増え始めています。
神奈川県では8月中旬にすでに「流行開始」の目安を超え、その後も患者数が増加しています。8月24日~30日の定点当たり患者報告数は2.99まで上昇しました。
クリニックでもこれから、
「急に熱が出た」
「家族がインフルエンザになった」
「会社で流行している」
「検査を受けたほうがいいですか?」
という相談が増えてくる時期です。
今回は、もし自分や家族がインフルエンザかもしれないと思ったとき、どうすればよいのかという患者さんの目線から整理してみたいと思います。
インフルエンザは「少し強い風邪」なのでしょうか?
似ていますが、少し違います。
普通の風邪では、
- 鼻水
- のどの痛み
- 咳
などが中心になることが多いのに対して、インフルエンザでは、
突然の発熱、強いだるさ、頭痛、筋肉痛、関節痛
など、全身の症状が強く出ることがあります。
その後、咳や鼻水などの症状が加わります。
ただし、ここで大切なのは、
「高熱がなければインフルエンザではない」とは限らない
ということです。
特に高齢の方などでは、インフルエンザでもそれほど熱が上がらないことがあります。
「昨日から熱があります。すぐ検査したほうがいいですか?」
これは診察室でも非常によく聞かれる質問です。
インフルエンザの迅速検査は便利ですが、万能な検査ではありません。
発症して間もない時期には、鼻やのどに存在するウイルスの量がまだ少なく、
本当はインフルエンザなのに検査では陰性
となることがあります。
つまり、
「検査が陰性だった=絶対にインフルエンザではない」
とは言い切れません。
検査結果だけではなく、
- いつから症状が始まったのか
- 発熱の経過
- 周囲で流行しているか
- 家族にインフルエンザの人がいるか
- 咳や全身倦怠感の程度
などを合わせて判断することが大切です。
迅速抗原検査は発症早期では感度が低くなることが知られており、検査を行うタイミングも診断には重要です。
「では、いつ病院へ行けばいいの?」
ここが一番難しいところです。
「検査が早すぎると陰性になることがあるなら、しばらく待ったほうがいい?」
と思うかもしれません。
一方で、インフルエンザの治療薬は、一般的には発症から48時間以内に開始すると最も効果が期待できます。
適切な時期に抗インフルエンザ薬を開始すると、発熱する期間を通常1~2日程度短くし、ウイルス排出も減少するとされています。
ですから、
「検査が陽性になるまで何日も待つ」必要はありません。
症状が強い場合、周囲で流行している場合、あるいは重症化リスクがある場合には、早めに医療機関へ相談してください。
特に早めに相談してほしい方
インフルエンザの多くは自然に改善します。
しかし、一部の方では肺炎などを起こして重症化することがあります。
特に注意したいのは、
- 高齢の方
- 小さなお子さん
- 妊娠中の方
- 喘息や慢性肺疾患がある方
- 心臓病がある方
- 糖尿病がある方
- 腎臓病がある方
- 免疫を抑える治療を受けている方
などです。
こうした方は「もう少し家で様子をみよう」と無理をせず、早めに医療機関へ相談してください。
インフルエンザで本当に怖いのは「熱」だけではありません
患者さんからすると、一番つらいのは38~40℃近い発熱かもしれません。
しかし医療者がより注意しているのは、
肺炎などの合併症です。
インフルエンザをきっかけとして、
「一度熱が下がったのに、また高熱が出てきた」
「咳が急にひどくなった」
「息苦しくなった」
「ぐったりして水分が取れない」
といった場合には注意が必要です。
特に、
呼吸が苦しい、意識がおかしい、水分がほとんど取れない、明らかにぐったりしている
場合には、通常の外来受診を待たず、早めの医療評価が必要です。
インフルエンザでは二次的な細菌感染や肺炎、まれに脳症などの重い合併症を起こすことがあります。
家族がインフルエンザになったら?
家族全員が必ず感染するわけではありません。
ただ、インフルエンザは咳やくしゃみなどによる飛沫や、ウイルスの付着した手を介して広がります。
家庭では、
手洗い・換気・咳エチケット
という基本的な対策が重要です。
そして意外に大切なのが、
「体調が悪い人が無理をして家族と同じ生活を続けない」
ことです。
高齢のご家族や持病のある方が同居している場合には、特に注意しましょう。
「熱が下がったから明日から仕事」は大丈夫?
熱が下がった直後でも、ウイルスを排出している可能性があります。
特に学校については、学校保健安全法上、
「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまで」
が基本的な出席停止期間です。幼児では解熱後3日です。
会社については学校のような一律の法律上の基準ではないため、勤務先の規定も確認してください。
ワクチンは打ったほうがいいのでしょうか?
これもよくある質問です。
インフルエンザワクチンを接種しても、
「絶対にインフルエンザにかからなくなる」わけではありません。
それでも接種する意味があります。
ワクチンには、
インフルエンザを発症する可能性を下げること、そして重症化を防ぐこと
が期待されています。
特に高齢の方では、インフルエンザに伴う重い肺炎などを予防することが重要です。
「去年打ったから今年はいらない」というものではなく、インフルエンザワクチンは基本的に毎シーズン検討します。
今年は流行開始が例年より早いため、接種を予定している方は、接種開始時期についてかかりつけ医に確認しておくとよいでしょう。
インフルエンザ?コロナ?普通の風邪?
実際の診療では、これを症状だけで完全に見分けることは難しいことがあります。
発熱、のどの痛み、咳、だるさ。
こうした症状はインフルエンザだけでなく、新型コロナウイルス感染症やその他の呼吸器感染症でも起こります。
ですから大切なのは、
「自分で病名を当てること」ではありません。
むしろ、
いつから症状が始まったのか
周囲で何が流行しているのか
どの程度つらいのか
重症化リスクがあるのか
を考えて、必要なタイミングで医療機関を利用することです。
― 「検査をするため」ではなく「診てもらうため」に受診してください
インフルエンザが流行すると、
「インフルエンザの検査をしてください」
と受診される方が増えます。
もちろん検査は大切です。
ただ、診察で本当に大切なのは、
検査の線が1本か2本かを見ることだけではありません。
肺炎になっていないか。
脱水になっていないか。
重症化するリスクはないか。
薬が必要なのか。
自宅で様子をみても安全なのか。
そこまでを判断することが診察です。
特に今年は、まだ暑さの残る時期から神奈川県でもインフルエンザが増え始めています。
「この時期だからインフルエンザではないだろう」と決めつけず、急な発熱や強い倦怠感、咳などがある場合にはご相談ください。
病気を早く見つけ、必要な治療につなげることも、地域の皆さまの健康を守るための大切な“羅針盤”だと考えています。
茅ヶ崎市の公費インフルエンザワクチンはいつから?
「ワクチンを受けたいけれど、公費で受けられるのはいつからですか?」
この時期になると、とても多い質問です。
茅ヶ崎市では、一定の年齢・条件に該当する方について、高齢者インフルエンザ予防接種を定期接種として実施しています。
対象になるのは、原則として、
- 接種日に65歳以上で、茅ヶ崎市に住民登録のある方
- 60歳以上65歳未満で、心臓・腎臓・呼吸器または免疫機能に一定の障害がある方(身体障害者手帳1級相当)
です。
昨年度(令和7年度)は、
2025年10月1日~2026年1月31日
が公費による接種期間で、期間中1回、自己負担2,000円でした。生活保護世帯の対象者は費用免除となっていました。また、接種券はなく、対象となる医療機関へ直接予約する方式でした。
では、今年(2026年度)は?
2026年9月6日現在、茅ヶ崎市から令和8年度の正式な実施期間・自己負担額は、市公式ホームページ上ではまだ公表されていません。
茅ヶ崎市は、季節性インフルエンザワクチンについて例年10月頃から開始すると案内しています。
今年はすでにインフルエンザが早い時期から増え始めていますので、
「流行しているなら、9月中にワクチンを打った方がいいの?」
と思われる方もいらっしゃるでしょう。
ただし、65歳以上の方などが公費の定期接種として受けるためには、市が定める実施期間内に接種する必要があります。
公費対象の方は、市から令和8年度の日程が発表されるまで少しお待ちいただき、発表後に接種時期をご相談ください。
一方、公費対象外の方については、医療機関での**任意接種(自費)**となります。茅ヶ崎市では、子どものインフルエンザワクチンも定期接種ではなく任意接種として扱われています。
「今年は流行が早い」からこそ、接種時期も一緒に考えましょう
ワクチンは「早ければ早いほどよい」というわけでもありません。
接種してから十分な免疫がつくまでには一般に約2週間かかり、茅ヶ崎市も昨年度は、流行前の12月中旬までの接種を勧めていました。
今年は流行の立ち上がりが早いため、
年齢、持病、仕事や学校、ご家族の状況なども考えながら、「自分はいつ接種するのがよいか」を考えることが大切です。
茅ヶ崎信愛クリニックでも、令和8年度の公費接種の日程が正式に決まりましたら、ホームページ等でお知らせします。
今年から予定されていた「高用量インフルエンザワクチン」はどうなったの?
今年のインフルエンザワクチンには、実は一つ大きな変更が予定されていました。
それが、**高齢者向けの「高用量インフルエンザワクチン」**です。
従来、日本で使われてきたインフルエンザワクチンに比べ、1株あたり約4倍の抗原量を含むワクチンで、高齢になるとワクチンに対する免疫反応が弱くなりやすいことを補うことを目的として開発されています。厚生労働省では、2026年度から75歳以上の方を対象に定期接種として導入する方針がいったん決まっていました。
ところが、今年7月になって製造販売企業から、製造工程上の技術的な課題により、予定通りの供給が難しいとの報告がありました。
そのため厚生労働省は、
2026年度(2026/27シーズンについては、高用量インフルエンザワクチンの定期接種への導入を見送る
ことを決定しています。
日本感染症学会も8月に、当初予定されていた2026年10月からの定期接種への使用が見送られ、国内での製造販売開始時期についても現時点では未定と発表しています。
「高用量がなくなったなら、今年はワクチンを打たなくてもいい?」
いいえ、そういう意味ではありません。
今回見送られたのは、あくまで新しく導入予定だった高用量ワクチンです。
これまで接種されてきた標準量のインフルエンザワクチンは、今年度も引き続き使用されます。 厚生労働省も、2026年度の定期接種については従来のインフルエンザHAワクチンを使用する方針としています。
ですから、
「新しいワクチンが中止になったから、今年は接種しなくてよい」
ということではありません。
特に高齢の方や、心臓・肺・腎臓の病気、糖尿病などの持病がある方では、インフルエンザそのものが肺炎や基礎疾患の悪化につながることがあります。
今年は流行の立ち上がりも早いため、従来のインフルエンザワクチンを適切な時期に受けておくことが大切です。
なぜ「高用量ワクチン」が注目されていたの?
インフルエンザワクチンは、接種すれば100%感染を防げるワクチンではありません。
特に高齢になると、若い方と比べてワクチンを接種した後の免疫反応が弱くなる傾向があります。
そこで、より多くの抗原を含ませることで、高齢者でも十分な免疫反応を引き出そうという考え方が高用量ワクチンです。
そのため今回の導入延期は残念ではありますが、
「高用量ワクチンが危険だから中止された」ということではありません。
製造・供給上の問題による導入延期であり、今後については薬事承認や供給体制を確認したうえで、改めて国で検討される予定です。