毎年きちんと健康診断を受けている。だから、自分は大丈夫。
そう思っている方は少なくありません。
もちろん、健診を受けることはとても大切です。ただ、診療をしていると「健診を受けたこと」だけで安心してしまうのは、少しもったいないと感じます。
健康診断の本当の価値は、結果を受け取った後にあります。
今日は院長コラムとして、健診結果を将来の病気の予防に生かすために、私が大切だと考えている3つのポイントをお話しします。
1.「要受診」だけを見るのではなく、去年からの変化を見る
健診結果を見ると、まずA、B、Cといった判定や「要精密検査」という文字に目が行きます。
しかし、診察室では判定だけを見ているわけではありません。
例えば、血糖が基準範囲内でも毎年少しずつ上がっている。体重が3年間で5kg増えた。血圧が以前より高くなった。肝機能の数値がじわじわ悪化している。
こうした「時間の流れ」は、1回の数字だけでは分かりません。
一方で、健診結果を数年分並べると、その人の体がどちらへ向かっているのかが見えてくることがあります。
そのため、受診するときには今年の結果だけでなく、可能であれば過去の健診結果もお持ちください。
2.健康診断と「がん検診」は同じではありません
ここは患者さんからよく聞かれるところです。
「毎年会社の健康診断を受けています。がんも大丈夫ですよね?」
残念ながら、必ずしもそうとは言えません。
国立がん研究センターも、定期健康診断や特定健康診査だけでは、必ずしもがん検診を受けたことにはならないと説明しています。
健康診断は、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や健康状態を確認する重要な機会です。
一方で、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなどには、それぞれ推奨される検診があります。
つまり、「会社の健診を受けたから、すべてのがんを調べた」ということではありません。
健診の項目を一度確認し、自分の年齢や性別に応じて必要ながん検診が抜けていないかを見ることが大切です。
3.異常値は「病気の宣告」ではなく、体を見直すきっかけです
健診で「LDLが高い」「血糖が高い」「肝機能異常」「便潜血陽性」と書かれていると、不安になると思います。
ただし、健診の異常値だけで病気が確定するとは限りません。
逆に、「少しだけだから」と何年も放置するのもおすすめできません。
大切なのは、その数字が何を意味しているのかを整理することです。
例えば、LDLコレステロールは数字だけでなく、年齢、血圧、糖尿病、喫煙、腎機能、心血管病の既往などによって治療の考え方が変わります。
便潜血陽性であれば、「痔があるから」と自己判断せず、大腸の病気が隠れていないかを確認する必要があります。
また、肝機能異常でも、飲酒だけが原因とは限りません。脂肪肝、薬剤、ウイルス性肝炎など、背景はさまざまです。
つまり、健診結果は「病名の一覧」ではありません。
これから何を確認すればよいのかを教えてくれる、体からの情報だと私は考えています。
40~74歳では特定健診も大切です
厚生労働省では、40歳から74歳を対象に、メタボリックシンドロームに着目した特定健診を行っています。
また、生活習慣病の発症リスクが高い方には、生活習慣を見直すための特定保健指導があります。
さらに、厚生労働省は毎年9月を「職場の健康診断実施強化月間」としています。
健診を受けること。そして、必要な方がその後の受診や生活改善につなげること。この二つがセットになって初めて、予防医療として意味を持ちます。(今年は終了しましたが・・・)
「去年も同じだったから大丈夫」は要注意
外来では、「去年も高かったので、いつものことだと思っていました」というお話を聞くことがあります。
しかし、毎年同じ異常が続いていること自体が、確認すべき情報です。
症状がない高血圧や糖尿病、脂質異常症は珍しくありません。
また、大腸がんなども早期には症状がないことがあります。
予防医療では、「具合が悪くなってから病院へ行く」だけではなく、症状のない時期にリスクを見つけることが重要です。
健診結果は捨てずに保管してください
私がおすすめしたいのは、とても簡単なことです。
健診結果を捨てずに、毎年同じ場所に保管してください。
紙でも構いません。スマートフォンで撮影しておく方法でもよいでしょう。
そして、今年の数字だけでなく、2年前、3年前と比べてみてください。
体重、血圧、血糖、HbA1c、LDLコレステロール、肝機能などの変化が見えてきます。
「基準値内だから終わり」ではなく、「自分の体は去年と比べてどう変わったか」と見るだけでも、健診の価値は大きく変わります。
茅ヶ崎で健診結果が気になった方へ
茅ヶ崎信愛クリニックでは、健診結果を持参してのご相談を受けています。もちろん健診の申し込みも受け付けています.
すべての異常値に治療が必要なわけではありません。
一方で、追加検査や内視鏡検査、生活習慣の改善が必要な場合もあります。
「どの項目を受診すればよいか分からない」という段階でも構いません。
健診結果を一緒に見ながら、今すぐ確認するもの、経過を見てよいもの、生活を少し変えるものを整理していきましょう。
健康診断は、病気を探すだけのイベントではありません。
これからの健康を考えるための、年に一度の大切な機会です。
参考情報
厚生労働省「特定健診・特定保健指導について」「職場の健康診断実施強化月間」、国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診について」を参考に作成しています。
監修 小島正之