健康診断で「中性脂肪が高い」と書かれていると、すぐに重い病気なのか、食後だったからなのか迷う方がいます。中性脂肪(トリグリセリド)は食事の影響を受けやすいため、数値だけでなく、採血前に何時間食べていなかったかを一緒に見る必要があります。
特定健診では、空腹時中性脂肪150mg/dL以上、または随時中性脂肪175mg/dL以上が保健指導判定値の一つです。ここでいう空腹時は「絶食10時間以上」、随時は「絶食10時間未満」を指します。150と175は重症度を機械的に分ける線ではありません。健診結果、採血条件、過去からの変化、ほかの検査値を合わせて判断します。

結果票で確認したい3つのこと
1.空腹時か、食後か
採血前に朝食や間食、糖分を含む飲み物をとっていた場合は、中性脂肪が上がることがあります。結果票に「空腹時」「随時」の記載があるか、採血まで何時間あいていたかを確認してください。食後だったという理由だけで結果を放置せず、再検査が必要かを医療機関に相談すると安心です。
2.前年までの数値はどうか
今回だけ高かったのか、数年かけて上がっているのかで、考え方は変わります。私は中性脂肪についても、今回の数字だけを切り取らず、採血条件と前年・前々年からの推移を確認したいと考えています。健診結果は「病気の宣告」ではなく、今の状態を確かめるための情報です。
3.ほかの項目も高くないか
体重、腹囲、血圧、血糖、HbA1c、LDLコレステロール、HDLコレステロール、肝機能なども見ます。中性脂肪400mg/dL以上や食後採血では、計算式で求めるLDLコレステロールの評価が適さない場合があり、non-HDLコレステロールなどを参考にすることがあります。
500mg/dL以上なら、次の健診まで待たずに相談を
日本動脈硬化学会の手引きでは、空腹時中性脂肪500mg/dL以上は専門医への紹介を考慮する基準の一つです。また、日本糖尿病学会のガイドラインは糖尿病患者を対象に、中性脂肪500mg/dL以上では急性膵炎の予防を目的とした治療介入を勧めています。
そのため、結果が500mg/dL以上だった場合は、症状がなくても次の健診まで放置せず、早めに医療機関へ相談してください。食後採血だった場合も、「食後だから問題ない」と自己判断せず、再検査の時期や必要な検査を確認しましょう。
強いみぞおちの痛み、背中へ広がる痛み、繰り返す嘔吐、発熱、意識がぼんやりするなどの症状がある場合は、急性膵炎など緊急性のある病気を否定できません。当日中に医療機関へ連絡し、症状が強い場合は救急受診を検討してください。

中性脂肪が高くなる背景
中性脂肪の上昇には、飲酒、食べ過ぎ、糖質や脂質のとり方、運動不足、体重増加が関係することがあります。一方で、糖尿病、甲状腺機能低下症、腎臓・肝臓の病気、妊娠、服用中の薬、遺伝的な体質が背景にあることもあります。
結果を下げようとして、極端な絶食や急激な減量を始める必要はありません。飲酒量、食事内容、体重の変化、服薬内容を整理し、原因を確かめたうえで現実的な対策を決めます。服用中の薬は自己判断で中止しないでください。
受診時に持ってきていただきたいもの
- 今回の健診結果票
- 過去1~2年分の健診結果(お持ちの場合)
- 採血前の食事・飲酒と、おおよその時刻
- お薬手帳、または服用中の薬がわかるもの
茅ヶ崎信愛クリニックでは、健診・検査異常のご相談と精密検査、生活習慣病を含む慢性疾患管理に対応しています。結果票を持参いただき、すぐ確認したい項目、経過を見てよい項目、生活の中で調整できる点を分けて考えます。
採血前に食べてしまった場合の考え方は「健診前に食事をしてしまったら?採血前の飲食と再検査の考え方」、LDLコレステロールについては「健診でLDLコレステロールが高いと言われたら」もご覧ください。健診結果全体の活かし方は「健診を受けたから大丈夫、ではありません」で説明しています。
参考資料
- 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4.3版)」(中性脂肪の保健指導判定値、空腹時・随時の定義、LDL評価の留意点。)
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理」(空腹時中性脂肪500mg/dL以上の紹介基準。)
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024 第15章」(糖尿病患者における中性脂肪管理と500mg/dL以上での膵炎予防。)
- 日本肝胆膵外科学会「急性膵炎」(上腹部痛、背部への放散痛、嘔吐などの症状。)
監修 医学博士 小島正之